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2022 BEST Album/EP 9(+1)選

ようやっとリストができました。

日記もサボっているのになんだという感じですが、しかし一年に一度のこれぐらいは間に合わせようぞという思いです。

 

さて、たくさん聴いた2022年発表のアルバムおよびEPを備忘録的に並べていきます。

9作品+番外編1作品。

一応順番がありますが、1-4位以外はその日の気分みたいなところがあるので、読み物としての楽しさのために番号がついていると思っていただけると...。

 

Spotifyでプレイリストも作ったのでここに置いておきます。

曲順は実際の順位とは違いバラバラです。

 

それではどうぞ。

9. Danzel Curry - Melt My Eyez See Your Future

Danzel Curryの新譜。これ以上自分に何か言うことがあるのか、という気もします。

 

個人的にはTriple JでRATMのカバーをしていた、というイメージが強く、このアルバムを聴きながら「こっちに振り切るのか」と思った記憶があります。まさにMelt味が強いアルバム。とはいえ、Wost Comes To Worstや、slowthaiのいるZatoichiみたいな曲があったりして、そこが良いスパイスになっています。

 

今年の前半に良く聴いていたこともあり、都市だったり、地下鉄だったり、そんな映像と紐ついています。

8. Florist - Florist

みんなで家を借りて、そこにこもって曲作りをした、というミュージシャンにとって夢のあるアルバム。Floristは今年になって初めて聞きました。

 

アコースティックな楽器とシンセ、ボーカルがちょうど良いバランスで混ざっています。

なにかラベルをつけるとすればフォークなのですが、とても大胆に生活が刻まれていて、音楽を使ったエッセイなんじゃないかというような気さえしてきます。

 

眠れない夜にふと聴いて、そのまま聞き惚れたというアルバムで、そういう意味でも思い出深いです。

7. GDRN / Magnús Jóhann - Tíu íslensk sönglög

去年からGDRNのセルフタイトルにどハマりして、その流れで彼女のアルバムを聞き倒していた頃にリリースされたアルバム。

 

全編ピアノ+ボーカルのみの構成で、派手さは全然無く、しっとり聞かせるタイプなのですが、歌詞が一切理解できなくても楽しめる何かがあります。この人のピアノはとても偉い。

 

今年のベスト全体において、一番恣意的な選択だな、とも思います。

もちろん好きでたくさん聞いたから、というのもありますが、これからの自分の一部になっていくだろうなという予感/意志も込めて。

(個人の年ベスで恣意的も何も無いだろう、という気もしますが。)

6. On Planets - To Leave and Come Back

デスクトップインディーアンニュイEP。あんまりな呼び方ですね。

 

EPという形式もあってか、音像含め作品全体がとてもコンパクトです。

シンセ中心で浮遊感がありながら、全編通してボーカルが全部を空中で繋ぎ止めているような。憂いはそれはもうたっぷりなのですが、それでも淡々としているところも好きです。

 

なんか短編小説を読むようなアルバムで、聞き終わるとしばらく自分なり近しい人なりを考える気持ちにさせられる憎いやつ。

5. Brimheim - can't hate myself into a different shape

Airwavesに向けた予習で知った、コペンハーゲンを拠点に活動するBrimheimのアルバム。

 

膨れ上がるボーカルに、唸るギターとシンセ、ふつふつと沸き上がって爆発する感覚が上手。もちろん感情の爆発という意味ですが、それもギリギリのところでコントロールされていて、最後はなんとなく希望を幻視するような終わりかたをします。

 

寒い空気の中で聞くことが多かったからか、晴れた冬の公園のイメージ。

どこかでもう一度ライブを見るまで死ねない...。

4. brakence - hypochondriac

2020年のEPからずっと新作を待っていたbrakenceのアルバム。

ある意味でやかましいのですが、その実は前作よりさらに洗練されていて、とんでもないです。

 

奇才というか変わり種と思われがちかもしれませんが、表現したいことの芯はしっかりしているように思います。その結果、自身の奥にあるものをどうにか表現しようという”もがき”みたいなものが感じられて、そこがとても良いのです。

 

あと、アートワークが黄土色ベースなのが個人的なツボ。

3. half•alive - Conditions Of A Punk

今年に入るまで知らないバンドだったのですが、たまたま聞いたHigh Upが衝撃的で、そこから一気にのめり込んだhalf•aliveの新作です。

 

まさにindie popと呼ぶしかないような音楽です。多幸感とメランコリーをぐるぐる混ぜてアドレナリンの勢いで押し出す、みたいな。それ以上の説明はもう野暮なんじゃないかというくらい。

 

好きになったら墓まで持っていくしかないタイプのアルバムで、来年もたくさん聞くのだと思います。

2. Kae Tempest - The Line Is A Curve

Let Them Eat Chaosが大好きで、それ以来追いかけているKae Tempestの4作目。

 

2019年のThe Book Of Traps And Lessonsはもうちょっとリズム感が抑えられているというか、小さいイメージだったのですが、今作は等身大より少し大きい。

今作では楽曲が静かな熱の持ち方をしていて、これ(特にボーカル)を平坦に感じる人もいると思いますが、個人的にはその感覚こそがとても好きです。

 

勝手に現在/将来との折り合いをつけるアルバムだと思っています。

1. Pinegrove - 11:11

ここ数年、このバンドを見つけてから毎年、ずっと彼らの音楽を聞いています。

リアルタイムでリリースを経験するのはライブ盤含めると三度目。

 

過去作と比べてスケールが上がった気がするのですが、それでも(曲の題材だけでなく、音楽的なことも含めた全てにおいて)手の届く範囲のものごとに集中して作っているように感じられて、そこが結局一番好きです。

 

季節感があるようで無くて、その上この一年中ずっと聞き倒したので、自分の2022年の思い出たちと地続きで繋がっています。

番外 Sigur Rós / Formless - The Art of Meditation

番外編として、Sigur Rós、Formless、そしてAlan WattsのThe Art of Meditationをば。

アルバムなのかどうかもよくわからず、どこに入れたら良いのかわからなかったので、ここに置いておきます。

 

一曲30分超。

瞑想に関してのガイダンス/コメンタリーを聴きながら沈んでいくような音楽なのですが、「音楽を血肉にせんとして聴くとは何か(後述)」と考えるときに、この曲を聴くときの感覚を思い浮かべます。

 

それは鑑賞をするというにはあまりにも主体的/肉体的なのですが、でも瞑想の曲なのだから、最終的には主体性もなにも無いのが理想のはずで、自分は今何をしているのかと思いながら、最終的には微睡んで寝るという...。

 

音像にしてもさすがSigur Rós。

最初のパーカッションからコメンタリーが始まり、鐘の音で一気にこの音楽の世界に落ちて、後はゆっくりとフェードアウトするまで、流れでそのまま連れて行かれます。

コメンタリーはなんとも言えない”きな臭さ”が気になると思いますが、自分はドキュメンタリーを見るような気持ちで聴いています。

 

音楽を聴く/体験する/鑑賞するとは、(自分にとって)何なのでしょう。

最後に

最近読んだ本の中で、鶴見俊輔が以下のように話していました。

「小説の読み方として、文明批評として読むというのと、人生の一部として読むのとは違うんですよ」「読んだ本が自分の血肉になっている、人生の一部になっている」

※一文目は鶴見本人の言葉。二文目は、対談相手の重松清が鶴見の発言を要約した際の言葉。

※出典:鶴見俊輔・重松清(2010). ぼくはこう生きている 君はどうか 潮出版社

 

今回はこれを考えながら文章を書いたところがあります。

自分はそもそも人生の一部として音楽を聴く以外の聴き方をしたことがあるのだろうか。

そんな人間が年間BESTを作るとはなんだろうか、みたいな。

結局は備忘録なんですけど。

 

今年は環境の変化が激しい年で、人生においてきっと重要な一年でした。

色々な人にお世話になって(そしてお世話をして)、そのなかでこれを読んでいる人も、読んでない人も、ありがとうございました。

 

来年はどうなるのでしょう。